瞳に映るのは

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"その事"を伝えられたのは、朝食を食べ終えた時のこと。 「叶羽、明日のこと聞いてる?」 「え?」 テーブルの上の食器をカウンターの上に置いていくミホさんを見上げると、「その顔は聞いてないね」と、彼女は呆れたような表情をした。 「レオに伝えておいてって言ったんだけど」 「……」 「明日、仕事が入ってるから」 「……仕事?」 「そんな警戒しなくたって大丈夫だよ」 「……」 「レオが出席する会合に一緒に付き添いで行くだけだから」 「…ああ」 「なにせあんた目当ての得意先の輩もいるからね」 「そう」 「ただ、ちょっとドレスのサイズが合わなくなってるかもしれないから後で私の部屋に来てくれる?」 それだけ伝えてキッチンに入っていくミホさんから再び視線を前に戻すと、ふと、隣から視線を感じた。 それがルナのものだということは分かり切っていて、一瞬だけぶつかった視線は向こうから逸らされる。 正直、ルナとどんな態度で接すればいいのか分からなかったから、そのいつも通りの素っ気なさが今は凄くありがたかった。 三日前にその腕に抱かれたのかと思うと未だに信じられず、過去にそういうことに興味を示したことのなかったルナがそんな行為をやってのけたことに、少なからず驚いていたのだ。 あの日私はルナに抱かれた後そのまま眠りについてしまって、次目が覚めた時にはルナの部屋にいた。 そして、起きた私を再び抱いてきた腕は、無慈悲なほどに優しかった。
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