瞳に映るのは

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そこで私は、なんとなく理解した。 ルナがこんなにも敵意を剥き出しにしているのは私に苛立っているのもそうだけど、前の私そのものがいなくなってしまったことへの戸惑いもあるんじゃないかと。 出会ってから今までずっと、ルナがあまりにも感情を殺していたから何事にも動じない人なのだと決め付けていた。でも実際は、十年以上も毎日一緒に過ごしてきた私の変化に、すぐにはついていけないほど困惑している。 すべて憶測にしか過ぎないけど、多分それは間違ってないはず。 「本当は…今ここにいるのが、本当の私なんだよ」 「……」 「ルナが認めたくなくても、私は」 「いい」 「……」 「結局そんなことを言ったって、いつかは叶羽もまた人を殺さなきゃいけない時がくる」 「……」 「大切なものを守る為に自分を犠牲にして、今度は大切なものを守る為に赤の他人の命を奪う。そうやって自分の首を絞めていって、いつかはその感情がぶち壊れる」 「……」 「そのザマを、俺が一番近くで見ててやるよ」 掴んでいた手をぱっと離して私の横をすり抜けていくルナは、私の方を一度も振り返ることなくリビングを出ていった。 ルナの言った言葉は、今の私にとって一番恐れていることだ。 例えばもし、暗殺の任務を言い渡されたら?それが出来なかったらおじさんを殺すと言われたら? 私は、人の命に手を掛けることが出来るのだろうか。もう二度と繰り返さないと誓った過ちを、もう一度犯せるのだろうか。 守りたいものを守るということは、結局は誰かを犠牲にする。誰かを犠牲にして、それを繰り返す。 そんな無限に続く闇のループから、私はきっといつまでも抜け出せないまま。
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