瞳に映るのは

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小一時間ほど連れ回されて、いい加減に立っていることもしんどくなってきた。それは、ずっと愛想笑いを浮かべていることもそうだけど、一ヶ月半全く建物の外に出ていなかったのにいきなりこれだけ人の多い場所にやってきたからだ。 レオが煙草を吸いに行っている間に、体調が悪いのを少しでも和らげようと会場の隅にある椅子に腰掛ける。 これだけ広い空間なのに酸素が薄いような気がして、息が詰まりそうだ。立食形式で、好きなだけ食べればいいとミホさんに言われていたけどそんな食欲すら湧いてこない。 「大丈夫?顔色悪そうだけど」 「……平気です」 「水でも持ってこようか?」 「いえ…ほんと、お構いなく」 唐突に私の前に立った誰かが声を掛けてきて、一応心配そうではあるが、はっきり言ってありがた迷惑ってやつだ。 断ってもいなくなる気配がなくて仕方なく伏せていた顔をゆっくりと上げると、目が合った男は「え」と呟き、固まった。 「君、もしかしてさっきから注目を集めてる女の子じゃない?」 「……多分、違うかと…」 「いやいや、絶対そうだって!」 「……」 いきなり大きな声を出すから、作り笑いさえ忘れて少しだけ眉を顰める。 けれど男はそんな私にお構いなしに、ポケットに手を突っ込んでそこからスマホを取り出すと、突然それを私に向けてカシャッと写メを撮った。
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