瞳に映るのは

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「……は?」 「やった。カメラ目線の写メゲット」 「え、ちょっ、それ盗撮でしょ」 「さっきからみんな君のことさりげなく撮ってるよ」 「そういう問題じゃなくて。消してよ」 「無理無理。これだけ至近距離で真正面の顔ゲット出来るなんて超レアだし」 「はい?」 「闇ルートで高額で売れちゃうんだよね」 普通本人を目の前にしてそれを言うか?と思うのだけど、男は悪びれもなく、尚も写メを撮ってこようとする。その図々しさに呆れながらも、体調の悪さの方が上回っていたからほっておいた。 「いやぁ、ラッキーだったな。まさか叶羽ちゃんと直接話せるなんて」 「…なんで名前、」 「君と君のところのボスが話してるのをね、こう…チョロっと」 「盗み聞きね」 「そう、それそれ」 「……」 「安心してよ。別に弱みを握りたいとかそういうわけじゃないから」 ははっと誤魔化すように笑って、「じゃあね」と手を振ってその場所から立ち去る男は、初めは心配して私に声を掛けてきたくせにあまりにもふざけている。 今すぐにでも私の写真をどっかに売り飛ばすのかと思うと一発ぶん殴りたかったけど、そんな気力も湧かなかった。 男に無駄な時間を取られてしまって、結局少しも気持ち悪さが収まることがないままに、もうそろそろレオの元に戻らないと…と重たい腰を上げる。 その時、ふと、大きく開いているバルコニーの入口を見つけた。
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