瞳に映るのは

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私がその手を離した。 そんなことは言われなくても分かっている。会ったところでどうにもならないことも。おじさんの首輪を取らないとどうしようもないことも。 ……ちゃんと分かっていたはずなのに。 あの一瞬で頭が真っ白になって、ただ煌生のことしか考えられなくなって、少しでいいから触れたいと強く望んでしまった。 会場を出るまでずっと、見えなくなってもずっと、振り返ってはその姿を追いかけた。 手を伸ばしても触れることの出来ない温もりを、縋るような想いで探し続けた。
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