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「おい!ふざけんなよ、返せっ!!」
「これ…」
「あ!?なんだよ!」
「これ、いつのだ?」
「は?いつって…ついさっき」
男の言葉に、今度は俺の方が目を大きくさせる番だった。
「どこ?」
「はぁ?」
「…っだから!どこだよ!?」
思わず声を荒らげて腕に掴みかかると、その勢いに驚いたように体を強ばらせた男は、「そこの扉横の椅子に…」と小さな声で呟く。
男の胸に携帯を押し付けて踵を返すと、「なんなんだよ…」と背中越しに届いた声を無視して、室内に足を運んだ。
けれどそこの椅子には誰も座っていなくて、人で溢れ返る広間に素早く目を配る。
「咲夜、聞こえるか?」
人を掻き分けながらインカムに声を掛けると、返事が返ってくる前に「ハルだ。ハルがいる」と早口で告げた。
それだけでこの通信が届いているはずの父さんと蓮の動く気配がして、緊迫した空気が流れるのが分かった。
咲夜が会場の入口付近に設置してあるカメラにアクセスして調べてくれている間に、とにかくその姿を必死で探す。
誰かにぶつかろうとも関係なく、ただひたすら。
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