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密談
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相変わらずその一撃は凄まじく早く、右頬に向かって飛んできた拳を回避してすぐに切るように飛んできた脚は、私の胴体を強く蹴り飛ばした。
砂浜の上に背中から倒れても休むことなく刃先が振り下ろされて、地面を転がった直後に刃が砂にザクリと突き刺さる音が聞こえる。
お腹に力を入れて勢いよく起き上がると、引くことなくルナに向かって間合いを詰めて、持っていたナイフを翳した。
「はーい。ストップ」
緊張感が張り詰めている空気の中に割って入ってきたミホさんの声は、私とルナの間に漂っていたピリピリと鋭い雰囲気を一気に壊す。
動きを止めてナイフを握っている手をお互い同時に下げると、一度もルナと目を合わせることなく、ミホさんの元に歩み寄った。
「叶羽、だいぶ離れてたのにいい動きするね」
「……そうでもないよ。思ってたよりも重たい」
今何をしているのかというと、私の動きを前のように戻す為の特訓をしている最中だった。それも実践を踏まえて、お互い本物の凶器を握る容赦のないデスマッチ。
この数日のお陰で私の体にはいくつもの刃傷が残されていて、勿論それのどれもがルナの仕業だった。
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