密談

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ミホさんから渡された水を受け取ってそれを飲みながら眩しい空を視界に入れる。あまりの暑さに茹ってしまいそうで、着ているティーシャツのウエスト部分の裾を持ち上げて汗を拭った。 季節は初夏。更に昼過ぎのこの時間帯は一日の中でも最も暑く、照りつける陽光が肌に刺さって痛い。 「ちょっと叶羽。あんた女の子なんだからもう少し気を使いなさい」 「へ?」 「へ?じゃなくて。そうやってティーシャツで汗拭かない。ほら、お腹も下着も見えてるから」 手を伸ばして私のめくれ上がったティーシャツを元に戻す彼女に、いきなり何を言い出すのかと怪訝な顔をする。すると、隣からもビシビシと刺さるような視線を感じた。 「もうそろそろ二人とも年頃になるんだから。気を使うことを覚えなさい」 まるで母親みたいな口ぶりで注意をしてくるミホさんからルナに視線を移すと、何か言いたいことがあるのか、無言のままじっと私を見つめている。 確かに高校生くらいの年齢といえば年頃に当たるのかもしれない。実際にルナは成長期に突入しているのか、前まで同じくらいだった身長が高くなっている気がする。 多分、百八十センチ弱くらい。ただ、骨格的には変わらずに細いままだったから全然男くさくない。だから今更そんな風に言われたって…と思ってしまうのはおかしいのだろうか。 「気を使うって…ルナに?」 「まぁ、そりゃあ一応」 「え…ルナに?」 「……」 「だってルナだよ?」 「叶羽、遠回しに凄く失礼なこと言ってるよ」 「いやいや。だってそれってルナが私を女として見るってことでしょ?いやぁ。ないないない」 半笑いで手と首をぶんぶんっと振って否定するけれど、こちらをひたすら見てくるルナが黙り込んだままだったから、すぐにその笑みを引っ込めた。
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