密談

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"ヘラヘラしてんな。気持ち悪い" そんな心の声が聞こえた気がして、いつその毒舌が飛び出すのかと身構える。 そんな私から顔を逸らしたルナはいきなり着ていたティーシャツを脱ぎ始めて、驚く私とミホさんを他所に、一人でさっさと歩いて行ってしまう。 そしてズボンを履いたまま海の中に消えていく姿は、相変わらず自由だった。 「ルナが消えたから特訓終わり〜」 砂の上に広げてあるシートにごろりと横になったミホさんは大きく伸びをして、仰向けに倒れたまま隣をポンポンっと叩いてくる。 そこに腰掛けて陽の眩しさに目を細めた時、「ずっと聞きたかったんだけどさぁ」と、ミホさんが話し始めた。 「叶羽は記憶が戻ってんの?」 「……」 「あのおじさん…えっと、主教様だっけ。あの人叶羽のことハルって呼んでるでしょ?」 「……」 「そもそも記憶がなかったのに、よくあの場所に行けたよね」 私が無言の間にも話を進めるミホさんから再び海に目を向けて、それでも尚沈黙を通した。 もしかしたらミホさんがこうして聞いてくるのは、何かレオに探りを入れるように頼まれているからだと思ったから。 記憶が戻ったことも、なぜあの島に辿り着いたのかも、レオには言っていない。別に聞かれてもいないし、私のことを自ら話す必要もなかった。 私の気持ちを察したのか、「別にレオに聞かれたわけじゃないよ」と事前に教えてくる声に、「だったらなんで?」と聞き返す。 「んー…あまりにもあんたが人間らしくなってるから興味が湧いただけ」 「興味?」 「そ。なにせここにいる連中はみんなロボットみたいじゃない?笑わないし、泣かないし…感情が欠けちゃってるから仕方がないんだけどさ」 「……」 「叶羽もずっとそうだったのに、この一年であまりにも変わり過ぎてるから、ただの生物学的な興味」 「そうやって話すミホさんも今みたいに他人に興味を持ってるから、Noirの中では変わってるよね」 「まぁね。でも人に興味はあったとしても信用はしてないよ。私が唯一信用出来るのは、自分とお金とPCだけ」 「そうなの?レオは?」 「レオは一番信用出来ないタイプでしょ」 「……」 ははっ、と乾いた笑みを零す彼女の顔を、目を瞬かせながら見つめた。
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