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『ハル?』
「……」
『俺だけど』
「……え。何?なんで?」
『ハル携帯持ってないだろ。だからケイさんと落ち合って渡しにきた』
まさかここで煌生が出てくるとは思わなかったからすぐに反応出来ない。
さっきまでずっと煌生のことを考えていたから尚更、タイミングが良すぎて驚いた。
『俺今から出張で出るから』
「あれ、今から?明日じゃなかったっけ」
『少しでも早く行かなきゃいけなくなって』
「そっか…」
『来週には帰ってくる』
「うん」
『仕事の合間にメールするから』
「……いいよ、無理しなくて」
思わずそんなことを口走ってしまってからハッとした。
今の言い方はかなり可愛げがない。それになぜだか突き放してしまうような口調になってしまった。
『俺がしたいだけだから』
だけど煌生は怒るかと思いきや、優しい声でそう告げただけ。
『だから気が向いたら返して』
「……」
『電話もするから』
「……うん」
『ハル、怒ってる?』
「怒ってはないよ。でも…」
『でも?』
「……拗ねてるだけ」
ぼそりと小さな声で口にして、込み上げてくる気持ちを抑えるように唇を噛む。
こんなことを伝えたって、忙しい煌生からしたら迷惑でしかないのに。
この前言いたいことを言ってしまったせいなのか、一度溢れた想いに蓋をすることが出来なかった。
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