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愛、煩い
五月の柔らかな日差しが暖かく、南風が緩やかに流れるような心地いい気候だった。
広がる青空を見上げながら、ふと新婚旅行で行った街を思い出す。たった一ヶ月前の出来事なのに、やけに懐かしく感じた。
「こら、ハルちゃん!上見ながら歩いてたら電柱に頭ぶつけてまた記憶喪失になるよ?」
「ちょっと。早速シリアスなネタぶっ込んでくるのやめてくれない?いい加減に笑えないわ…っていうか、凛もよくそんなことを自らほじくり返してきたわね?」
「私、誰…?」
「ハルも乗らなくていいから。っていうかハルが言ったら本気で笑えない」
「ゆづりん元々そこまで笑わないじゃん」
「失礼ね。これはお父さんのせいよ。昔はよく笑う天真爛漫な女の子だったわ」
「それが今ではこんなだもんな!」
「おいカズ、てめぇ今なんつったよ。こんなってなんだよ。ああ?」
「残念ながら結月がそんな怖い顔したってなぁ……俺ってば初っ端から出番があってテンションマックスハッピィだからあああ!!」
「うるせぇ!モブキャラ!」
「ひぃっ!鬼ババァ!」
「ああ!?なんだとくそハルっ!今すぐ頭蓋骨叩き割って記憶抹消したろか!?」
「鬼ババァ!鬼ババァ!」
「ああん!?」
ばりっばりにドスを効かせてキレっキレに眼光をギラつかせるゆんは、ここ最近勉強が忙しくてストレスが溜まっているみたいだ。
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