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『いや、一緒じゃない』
「ホテルまで一緒だった!?」
『三十分前に別れた』
「三十分前…」
呟いて麗に目配せをすると、頷いた麗は戻ってきたケイに視線を滑らせた。するとケイがどこかに電話をかけ始めたので、もしかしたら情報屋のネットワークはパリでも健在なのかもしれない。
「実は今私と麗が襲われたの。レオとルナを誘き寄せるために連れて行くって言われて、私達は無事だったけど、空港で一緒にいるところを見られてたみたいで」
『……』
「もしかしたらゆんが…」
話しているうちに部屋の前に到着して、麗が先に中に入っていく。いつの間にかその手にはピストルが握られていた。
『ゆんは?』
落ちついた声が答えを促す。滅多に疑問を口にしないルナにとって、それは急いているのと同じだった。
部屋を歩いて確認した麗が首を横に振る。同時に中に入ってきたケイが、「麗さん、これ」と差し出したもの。それはゆんが持ち歩いているリップだった。
「廊下に落ちてた」
その言葉に私も麗もそっと息を飲む。しかし一時も足を止めている場合じゃなかった。
「ルナ、ゆんが連れていかれた」
今は気を遣っている暇もない。はっきりと告げれば、電話の向こうからは大きな物音が聞こえてきた。
それは間違いなく、ルナがゆんを探しに走り出した音だった。
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