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視界に映った景色に見覚えがなくて戸惑った。すぐに起き上がろうとすればロープか何かで後ろ手に縛られていて両腕の自由が利かず、身を捩ると足まで縛られていることに気が付いた。
どうやら意識を失くしていたらしい。冷たい床の上に寝転がったまま、自分の置かれている状況を把握しようと思考を巡らせた。
まず、ここはどこだろう。今日ルナと観光した時に見た修道院の造りとよく似ている。天井が高く、見上げた先にはステンドグラスがあり、私が今寝そべっている場所は祭壇のようだ。部屋全体が石造りのために重厚感があり、蝋燭のような橙色の灯が所々に点在している。
なんとか腕と脚を使わずに身を起こし、自分の荷物がどこにあるのか探してみるけど、今この状況で置いてあるわけがなかった。
とりあえずこのロープをどうにかしなければ――と思った時、誰かの話し声とこちらに近付いてくる足音が聞こえた。
その方向を見れば、そこに姿を見せたのは見知らぬ男数名。そいつらは私が目を覚ましているところを見ると、不敵な笑みを浮かべながら近付いてきた。
「ようやく目が覚めたか」
スーツを着ている男が英語で話す様子は、まるで洋画のワンシーンのよう。アクション映画やスパイ映画で主人公が捕まって悪者に追い詰められる場面だ。まさに今私が置かれているのはそれと同じだった。
一人の男が私の前にしゃがんで目線を合わせてくる。聞きたいことは沢山あるけれど、余計なことを言ったら"うるせぇ!"と顔を殴られるかもしれない。私の美貌に傷がつくのだけは避けたかった。
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