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一体どうしたのかと皆が不思議に思った直後、そこから誰かが滑り込むようにして飛び込んできた。それは確認することが出来ないほどに速い。
戸惑っている間にも、発砲音が数回空気を裂いた。周りにいる男が数名、ぐっ、と唸りながら倒れていく。そこでようやく、たった今飛び込んできた人が攻撃を仕掛けていることを把握した。
「どうして…」と、私を数発殴った男が呟くのが聞こえる。そんな疑問を抱くのも仕方がなかった。
だって、私だって半信半疑だ。僅か五分前くらいに電話したばかりだったのに、なぜだか彼はそこにいて、相手にやり返す隙を与えずに的確に引き金を引いていく。
我に返った男達が応戦しようとピストルを引き抜くものの、すかさずルナの放った弾がピストルを弾き飛ばす。誰が何をしようとしているのか先に読んでいるかのようで、まるで四方に目がついているみたいだ。
ヒーローのように現れたルナは、タタ、と身軽に駆けながらも男達に突っ込んでいく。怪我をしてしまうんじゃないかと肝が冷えたものの、それこそいらない心配だった。
ルナは狙いを定めていた奴らの懐へ、コンマ一秒で肉迫していた。その凄まじい速さに男達は目を剥きつつも引き金に指をかける――ことは出来なかった。
ルナを中心に、大の男が一人ずつ弾き飛ばされていく。中には遠くの壁に背中を打ち付けて倒れる者もいた。桁外れのパワーだ。
あれだけの人数をもってしてもたったの一人で倒せるものなのかと、私はただ呆然と見つめることしか出来なかった。
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