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「お前らのせいでな、あの後散々だったんだよ。仲間も相当消されちまった。本当に…お前らが邪魔しなかったら全部上手いこといってたのによ!」
何かを思い出したのか、男の口調が荒くなる。更にその鬱憤を晴らすようにルナの顔を叩き、一発にとどまらずもう一発拳を振るった。無意識に、ヒュ、と喉が鳴った。
気が付けばその唇からは血が流れていて、見ているだけで痛々しい。それなのに男は殴ることをやめようとしない。一方的な暴力は見るに耐えなかった。
「……やだ…、やめてよ…」
ルナが何をしたのかは分からない。そんな風に恨みを買うことをしたのかもしれないけれど、私からしたらどうでもいいことだ。
そんなことよりも、ルナが痛めつけられて最終的には殺されてしまう――そんな光景を前にして黙っていられるわけがなかった。自分に爆弾が仕掛けられている事実さえどうでも良くなるほど、ルナが傷付くことが嫌だった。
「やめて……やめてっ!」
そう叫んだ瞬間、男の手がピタリと止まる。もうこの際無我夢中だった。
「お願い…私のことは好きにしていいからっ…殴るなり、殺すなり…金儲けに使ったって構わない。どこかに売り飛ばしたっていいし、なんなら今すぐあなた達を満足させるわ。だから…だからっ、」
「ゆん」
「…っ、」
だから、どうかルナを傷付けないで。――その懇願は最後まで口にすることが出来なかった。
滲む視界にルナが映る。ずっと無表情だったくせに、そこには少しだけ怒っているような顔があった。
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