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「…んで…なんで…?」
ぽろぽろと涙が落ちて、声が震えた。そんな私を見てルナは目を見開く。
だって、言ったくせに。
例えばもし私とルナが捕まって、どちらかの命を助けてやると言われたら、ルナは迷わずに自分を選ぶって言ったくせに。
それなのにどうして大人しく捕まってるんだよ。私に爆弾が仕掛けられていようが、そんなの関係ないじゃん。
どうして自分が助かる選択をしないんだよ。言ってることが違うじゃんか。
「ルナ、逃げてよ…私はいいから、逃げて…っ、」
手が拘束されているせいで涙を拭うことが出来ない。必死に言葉を紡ぐ私を、ルナはどこか苦しげな表情で見ていた。
「こんな状況でもこいつの心配か…泣けるねぇ」
フ、と小馬鹿にしたように嗤いながら、男はルナの頬にナイフの刃を当てる。そこから血が滲むのを見て、益々涙が溢れた。
「だけどな、残念ながらこいつは生かしちゃおけないんだよ。なぜなら、こいつは過去に俺らの邪魔をしたんだ」
「……邪魔?」
「何十年もかけて作ってきた薬を完成間近に研究所ごと破壊しやがった。その薬は、俺らを仲介して裏のデカい組織やマフィアに売り飛ばされる算段だったんだよ。その薬をこいつらは全て駄目にしたんだ。お陰で金儲けもパーになるわ、キレた連中に追われるわ、散々だったわけだよ」
「……」
「それがまた嗅ぎ回っているとなると、今度こそその前に消しておかなきゃならない」
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