120人が本棚に入れています
本棚に追加
男の説明を聞いているうちに、ようやくピンときた。
それは恐らく、Rextupの火災の件と深く関係しているのだろう。サクにしつこく聞き出したところ、そのRextupが非合法な薬を開発していて、その非合法な薬を作るために非道な人体実験が行われていた。そしてルナは、過去にその人体実験の被害者だった。それを破壊させるためにRextupを爆破させた――。
つまりその薬を金儲けに使おうとしていた組織が、今改めてルナに復讐しようとしている。
大まかに言えばこんな感じだろうけど、ただ一つはっきりしていることは、男達が今している行為がただ理不尽だということ。
「だからこいつには痛い目に遭ってもらわなきゃならないんだ」
男は話しながらもルナの鳩尾を蹴り上げる。それだけ強い衝撃を受けても、ルナは声を出すことも、顔色を崩すこともなかった。
ルナのその様子には違和感しかなかった。痛いはずなのにちっとも変わらないその表情が、まるで人間離れしているみたいに見えた。
それはきっと、ルナの過去がそうさせたのだ。
小さい頃から今みたいに理不尽な暴力を受け続けて、だけど守ってくれる人なんかいなくて、だから何をされても怯えることもなく、平然と受け容れてしまう。
それは一見強さに見えるのかもしれないけど、そうじゃない。
そうじゃなくて、ルナは自分を守るために、心を殺す術を知ったんだ。
「……ふざけないでよ」
「あ?」
「ふざけんじゃないわよっ!」
その理由が分かった今、やっぱり大人しくなんかしていられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!