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怒りで、声が、唇が、全身が震えた。生まれて初めてこんなにも人が憎いと思った。
憎しみと憤りだけで、こんなにも涙が流れることを知った。
――だって、知らないくせに。
「……ルナは、その薬に散々苦しめられてきた被害者なの!だから…だからっ、」
あんた達はその痛みを知らないくせに。ルナが今までどれほど傷付けられて生きてきたのか、何も知らないくせに。
だけどきっと、私の声が奴らに届くことはない。
「もう…っ、もう、これ以上ルナを傷付けないで。お願いします…ルナを離してっ、」
本当はぶん殴ってやりたいのに、ごつっと地面に頭を押し付けて懇願することしか出来ない。そんな自分の弱さが歯痒かった。
「そんなに言うんだったらお前が死ぬか?」
その時予想外の台詞が聞こえて、勢いよく顔を上げた。男は爆弾のスイッチを私に見せてにやりと笑う。
「よくよく考えれば、この冷たい男がわざわざ追いかけてきたんだ。だったら女を消せば少しはこたえるんじゃないか?」
男が、なぁ?と同意を求めれば、ルナを捕まえている男も納得したように頷く。
だけど、「まて」と間に入ったのはルナだった。
「あいつは関係ない」
「でも本人があんたを助けるためにそれを望んでる。……そうだろ?」
男の顔がこちらを向く。ルナの視線も動いて私を捉えた。その瞳は、余計なことは言うな、と訴えていた。
「ルナが助かるのなら構わないわ」
だけど、私は迷うことなくその答えを告げた。
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