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「ゆん」とルナの咎める声が聞こえる。標的が私に向いたことで、涙はピタリと止まった。
腹は括った。ルナが助かるのなら、本当に命を差し出してもいいと思った。それほど愛しているのだと伝えておこうかと思ったけど、普通にキモいとか言われそうだし、死ぬ間際にそれも嫌だな。
だったらとびっきりの笑顔を見せて最後は可愛いって思ってもらえる方が――
「……ねぇ、今舌打ちした?」
「うるせーな、黙ってろ」
しかし私が超絶可愛い笑みを見せる前に、チッ、と舌打ちをする声が聞こえた。驚いてルナを見れば、更に苛立たしげな台詞が向けられる。
その突然の塩対応にどう反応すればいいのか分からず、これには私のみならず男達まで言葉をなくしていた。
「えーっと…ルナ?」
「おせーんだよボケ」
「え?ボケ?」
続けて暴言を吐かれて、さすがにちょっと冷たいんじゃないかとムッとした。
――次の瞬間。
突如、ブオォン、というバイクのエンジン音が鳴り響き、驚いた私の体はビクッと跳ねた。
「えっ!?な、何!?……きゃあ!!!」
挙句にガシャーンッ!と硝子の砕ける音がして、反射的に悲鳴が漏れる。
見上げた先にはなぜだかバイクが宙を飛んでいて、信じられない光景に目ん玉が飛び出るかと思った。どうやらあれがステンドグラスを割って飛び込んできたらしい。
けれど叫ぶ私とは反対に、ルナは冷静だった。
男達がその出来事に不意を突かれている隙に拘束を解くと、目の前にいる男に頭突きを食らわせて爆弾のスイッチを奪う。
そして男の足を弾くと、床に倒れた男の顔の横すれすれに、これまた奪い取っていたシースナイフを突き刺した。
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