128人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ!ご、ごめん!」
「……」
「ごめんなさい、睨まないで…」
ルナの膝の間に座りながら、しゅん、と頭を下げる。ルナは私を睨みつけていたけど、疲れたように短く溜め息を吐くと、着ている上着を脱いだ。
「あ。ありがとう」
それを私の肩にかけてくれて、そこでようやく自分の恰好に気が付いた。
そういえばさっき胸元をナイフで切りつけられたんだった。だけど今はそんなことより、ルナの傷だらけの顔の方が大ごとだった。
「ルナ、ごめんなさい。私が連れ去られたせいでこんな傷…」
「……」
「ごめんね、痛いよね」
「別にゆんが悪いわけじゃねーし、俺は平気」
「でも、」
「慣れてるから」
「……」
「男だし、殴られてもどうってことない」
「……平気じゃない」
「……」
「平気じゃないでしょ!」
思わず大きな声を出すと、驚いたのかルナの手がぴくりと揺れた。
「慣れてるとか…そういう問題じゃない」
「……」
「男だから、とか、それも違う」
「……」
「だってルナは、過去に沢山辛い想いをして、いっぱい傷付いてきたでしょ?」
声が震えそうになるのを必死に抑えて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。そんな私をルナはじっと見つめていた。
「だから…もうルナは傷付かなくていいんだよっ、」
拳を握り締めて、グッと唇を噛む。また同情しているのかと思われるのが嫌で、泣くのだけは避けたかった。
最初のコメントを投稿しよう!