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思い返してみれば、藤花の言う通り眉目秀麗な男だった。万人ウケをしそうな甘い面立ちは、お伽話に出てくるような王子様が翻しているマントだって似合うだろう。あんな口の悪い王子様なんて願い下げだが。
「疑問なんですけど、羽衣はその王子に向かって"次は勝手に死ね"と言い残したんですよね?それって"次がある"ということですか?」
不思議そうに尋ねてくる藤花に、なかなか良い着眼点じゃないか、と頷く。
「恐らく王子はまた命を狙われるよ」
「それは彼の未来を視たから?」
「いや。あの犯人と王子のやり取りを見てたら、どうやら二人は知り合いみたいなんだ。その犯人が王子を殺そうとしていたということは、何か殺さないとならない理由があったわけだから、今回殺し損ねた犯人はまた王子の命を狙うってこと」
「……ふむ、なるほど。で?もう助けないんですか?」
「助けない。あんな男のためにミガワリにならなきゃいけないなんて死んでもごめんだ」
「えー…王子様の顔拝みたかったなぁ…」
「気になるのなら君が勝手に助ければいい」
「そんなこと言われても私は殿方のお顔なんて分からないですもの」
「そう言うと思って似顔絵を描いてきた」
「似顔絵って…いい加減ご自分の絵心の無さを理解して頂けませんか?ほら、顔から触覚が飛び出してるじゃありませんか」
「眉毛だ」
「……」
せっかく描いてやったのに、藤花は複雑そうに私の作品を眺めている。どうやらいつになっても藤花のような凡人には私の才能が伝わらないらしい。
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