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普通に歩いたら十五分の道のりを、その倍の時間を費やして歩く。およそ三日ぶりの学校なのに、私の絵のセンスについて藤花に力説していると大幅に遅刻してしまった。
だからといって特に焦ることもなく、ふぁ、と欠伸をしながら誰もいない校舎を進む。すると突然バシンッと背中を強く叩かれて前のめりにつんのめった。事前に足音が聞こえていたから良かったものの、身構えていなかったら吹き飛ぶレベルだ。
「羽衣ちゃん!おはよう!」
「前から思ってたんたけど、君のどこにそんな力があるの?」
「え?あっ、ご、ごめん!痛かった!?」
「いや、別にいいんだけどさ」
体勢を立て直して階段に差し掛かる。その横を小柄な女の子がひょこひょことついてきた。
たった今背中をぶん殴ってきたのは、違うクラスの友人である世莉。小動物みたいなのにその力は強烈で、肩をポンっと叩きたいのだろうけど、加減を知らないのかいつもめちゃくちゃ痛い。
「ってゆーかもう授業始まってるよね?何してんの?」
「あ、うん…筆記用具をベランダから落とされちゃって」
「あー…そう」
「ムカついたから首謀者の堀田さんのことぶん殴ったの。そしたら彼女鼻血が出ちゃって職員室に呼び出された」
「……君って本当にタフだよね。そういうところ嫌いじゃないよ」
「へへ、ありがとう。羽衣ちゃんに褒められちゃった。」
「……」
先月、私達は高校二年生になった。世莉とは一年生の頃は同じクラスだったけどクラス替えでバラバラになり、どうやら今のクラスで陰湿ないじめにあっているみたいだ。一番の理由は"ぶりっ子だから"らしい。
だけど今話した通り、世莉は小さい頃にキックボクシングをやっていたらしく、なかなか強い。下手に手を出したらその倍の返り討ちが待っている。
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