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時間が遅くなるにつれて空は暗くなり、計画が実行される直前には照明の灯だけがパーティー会場を照らしていた。
グラスを片手に大勢の男女が盛り上がっている中、隅の方で美澄が現れるのを待つ。その間にふとさっきの美澄の様子を思い出して、自然と溜息が零れた。
出会った当初からだが、美澄には人と違う空気感があった。美澄と過ごしているうちにそれがなんなのか徐々に分かってきたけれど、さっきの言葉で、その理由が一層明白になった。
美澄の無気力感は、生に対しての執着の無さが生み出しているものだ。死んだ方が良かった――死ねば未来を視なくて済む――その想いが、彼女のことを孤独を切望する人間にしてしまった。
なぜだか俺は、それが無性に悲しかった。
「あのー…お兄さんって、俳優さんとかですか?」
ぼんやりと突っ立っていると急に声を掛けられて、ハッと我に返る。慌てて庭に視線を向けた後、腕時計を確認して、まだ五分くらいあることにホッとした。こんな大事な時に考え事だなんて迂闊だった。
「あー…えっと、なんですか?」
「お兄さん、モデルさん?」
「いや、知り合いが参加してて」
「えっ!そしたら一般の人?」
「まぁ…そうっすね」
いつの間にか目の前には知らない女が立っていて、上目遣いで俺を見ている。適当な返事をしつつも、美澄の姿を探した。
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