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指示された通りに防弾チョッキをつけた。だからといって信じているわけじゃない。九割方不信感を抱いたまま、ポケットに手を突っ込みながら歩いた。
だって、どう考えても有り得ないだろう。この前の女も、さっきの女も、自分がどれだけ人間離れしていることを言っているのか分かっていないのだろうか。
しかし、それならば、なぜあの二人は見ず知らずの俺にそんな嘘を吐いたのだろう。という疑問も拭えなかった。
……あと十分といったか。ちらりと腕時計を見ると、そのタイムリミットがあと一分に差し迫っていた。
本当に俺は撃たれるのだろうか。一瞬だけそんな考えが脳裏をよぎって、ハッとした。
有り得ないと思っているくせに馬鹿げている。何度も言うが、未来を予言することなんて不可能だ。
もう少しで情報屋と待ち合わせの場所に着く。早いところ取引をして、変な二人組の女におかしなことを吹き込まれたことを話そう――
そう思った、次の瞬間。
ドスッと背中に強い衝撃が走った。
「…っ、」
驚いて固まった刹那、もう一発背中に同じ感覚を受ける。左胸付近に二発。痛みはないけれど、瞬時にさっきの女の言葉がよぎり、前のめりに倒れた。
一体何が起こったのか。うつ伏せになったまま頭の中はグルグルと混乱している。だって今、間違いなく撃たれたよな?銃声が二度鳴って、心臓の後ろを射抜いた。
サーっと血の気が引いていく。耳の中でドクンドクンと鼓動を強く打つ音が響いていた。
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