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「王子、とても素晴らしい演技でしたよ。何度か死んだフリをしたことがあるのかしら?」
トントンと肩を叩かれて、ゆっくりと体を起こす。さっきの女が俺を見下ろして笑っていた。
「なんだよ、今の」
「まぁまぁ。そんなに固く考えないでくださいな。時には柔軟に物事を捉えることも必要ですよ?」
「……柔軟に考えて、あんたのことを信じろって?」
「とりあえずもう一度倒れていただけます?もう間も無く、ここに王子の死体を回収するワゴンが到着します。その方達には私が話を通しますので、その間も石みたいに動かないでくださいね」
「……」
もはや王子と呼ばれていることに突っ込む余裕すらない。トンっと肩を突かれて、もう一度寝転ぶように促された。
基本的には賢い方だと言われている。理解力だってあるし、決して頭も固いわけじゃない。
だけど今のはどう考えても物事を柔軟に考えて飲み込めるレベルの話じゃないだろう。
「あんた、こういう状況に慣れてるんだな」
「いえ、そんなことは決してないですよ」
「さっきの連中、死体回収屋だろ?死んだ直後に体を解体して売り捌いてる」
「あら、よくご存知ですね。どうやら若い男の死体が欲しかったようで、少しばかり苦戦しました」
さっきの場所を離れて女と公園に来ていた。女は『そんなことは決してない』と言っているけど、先ほどのことを思い出したら明らかに只者じゃない。
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