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「ひとつだけ例を挙げますと、つい先日女子高生誘拐事件の犯人が捕まったことはご存知ですか?」
「ああ、うん。やけに騒がれてたよな。助けた人間の身元が不明だとか」
「それも羽衣の力のお陰です」
「……まじかよ」
「誰も行かないような山奥で女の子が捕まっていることを知った羽衣は助けに行きました。しかし、詳しく事情を聞かれたら困ってしまう。ということで、被害者を警察の元に連れて行ったのです。なんなら他にもいくつもありますよ?羽衣の武勇伝。聞きます?」
「いや…今はいい。結構色んな情報を聞き過ぎて整理が出来てない」
「そうですか。それならば、私はもう行きますね」
「え」
「え?」
ぶつっと会話を切って歩き出そうとした女に、思わず呼び止めるような声を出してしまった。女も不思議そうに俺を見返してくる。
「あーえっと…その…なんでそれを俺に話した?」
「羽衣の力のことを、ですか?」
「ああ。だってあんま人に知られたくないことなんじゃねぇの?」
「確かにそうですね。まぁ、強いて言うならイケメンだからですかね?」
「そんな不純な動機でいいのか」
呆れながらも煙草を吸う。女は考えるように、ふむ、と顎に指を当てた。
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