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「真剣に答えるのであれば、羽衣が自分の力のことを王子に話したからですかね?」
「……ああ。未来を視たって?」
「ええ。そんな風に彼女が自分の力のことを口にするのは初めてなのです。だから……なんとなくですかね?」
「……そうっすか」
「そうっす」
女はくすくすと笑う。まったく説明になっていないけど、とりあえずこの女とウイっていう女が信頼し合っているのはなんとなく伝わってきた。
では、と再び女が別れを告げる。ここで何事もなかったかのように別れれば、きっとさっきの出来事も、この前の出来事も、ただの過去として片付けられるのだろう。
だけど──
「……まて」
「はい?まだ何か?」
ふいに、あの時俺が、『頭イカれてるんじゃねぇのか』と吐き捨てた直後の女の顔が脳裏に浮かんだ。
傷付いたような表情をさせてしまった罪悪感がどうしても拭えなかった。
「俺もあいつのところに行きたい」
「……行ってどうする気です?」
「一度ならず二度も救われたんだ。ちゃんと礼を言いたい」
俺の申し入れに女は一瞬驚いたように目を丸くしたものの、すぐににっこりと笑う。そして俺と真正面から向き合うと、スッと手を差し出してきた。
「ではご案内しましょう。右京一覇さん」
「……は?なんで俺の名前」
「全裸で土下座して羽衣のおみ足に口付けてくださいね?」
「……」
前言撤回。握手した手をめちゃくちゃ強く握られながら告げられた台詞に、すぐさま気を遣ってしまったことを後悔した。
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