sacrifice.01 拒絶

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「あー…この前あんたへの態度が酷かったこと、悪いと思ってる」 「"悪いと思ってる"は謝罪じゃない」 「申し訳なかった」 「"申し訳ない"は、さほど自分が悪いと思っていないやつがその場凌ぎで使う言葉だ。上からで、誠意が足りない」 「……すみませんでした」 「別にそこまで気にしてない。ってことで、どうぞお帰りください」 「羽衣ったら、せっかくわざわざ謝りに来てくださったお客様に失礼ですよ。それに私はもう少し王子とお話ししたいですもの」 「別の場所でどうぞ」 「なぁ煙草吸っていい?」 「君はさっきからマイペース過ぎる。もう少し自分の立場を」 「君じゃない。一覇」 「何?」 「ひとは」 許可なく勝手に煙草を吸い始める男を見て、だからなんだよ、と眉を寄せる。 「それは私に呼べと?」 「右京でもいいけど」 「絶対にいやだ」 「あんたの名前は羽衣だよな」 「気安く呼ばないでくれるかな。そもそも君と会うのは今日が最後だ」 「じゃあ名字は?」 「教えない」 「美澄(みすみ)です。美しく澄むで美澄。素敵な名前でしょう?」 「じゃあ美澄で」 「まて、勝手に教えるんじゃない。君も気安く呼ぶなと」 「美澄って噛みそうだからミッスーでいいか」 「ふざけるな。百歩譲歩しても美澄様だ」 そんなネズミのキャラクターのような愛称で呼ばれるなんて溜まったもんじゃない。腕を組んで文句を零せば、右京は煙草を挟んでいる唇をゆるりと上げた。 あ、やられた…と誘導されたことに気が付いた時にはもう手遅れだった。
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