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「じゃあ美澄ってことで。俺は右京でも一覇でもどちらでも」
「だったら熟成バルサミコ酢なんてどうだろう」
「さっき藤花さんも言ってたけど、その熟成なんたらってなに?」
「えっやだ、王子に名前で呼ばれちゃった……恥ずかしい」
「じゃあバルサミコ酢を略してバルさんと呼ぶことにしよう」
「ふざけんな殺虫剤か」
「王子、ごめんなさい。羽衣ってばこの愛くるしい見た目に反して愛嬌がないというか、愛想がないというか、刺々しいというか、素っ気ないというか……とりあえず誰にでもつんけんしちゃう女子なんです」
「見れば分かる」
「この数分で分かってたまるか」
勝手に人のことを言いたい放題している二人にげんなりする。本当だったらもう眠りにつく時間なのに、予定が狂いまくりだ。
「他に話すことがないのなら本当に帰ってくれないかな」
「じゃあ単刀直入に言うけど、あんたの力について聞きたい」
「断る」
「その力ってどうなってんの?どうやって未来を…じゃなくて、どうやって人の死を視んの?」
「……」
「例えば俺が撃たれたって言ってたけど、それは俺が撃たれて死ぬところまで視たってことか?」
「……その前にこっちからも聞きたいんだけど」
「何?」
「君はこの力を本気で信じてるの?」
右京の瞳をまっすぐに見つめて尋ねる。彼が謝罪の言葉を述べたということは私の力を信じたからだと思うけど、それでも普通だったらもっと疑ってかかるだろうに。
あまりにも呆気なく信じ過ぎじゃないだろうか。
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