sacrifice.01 拒絶

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「信じるも何も、二回も目の前で見たら信じざるを得ないっつーか」 「たかだか二回で信じるのはおかしい。普通は受け入れられない」 「じゃあ実際はどうなんだよ。嘘なわけ?」 「いや、嘘ではないけど…大抵は有り得ないだろうと切り捨てる」 「その普通とか大抵とかよく分からないけど、俺は純粋に見たものを信じてるだけだから」 「じゃあ例えば仮に信じたとしても、もっと他に反応があるはずだ」 「反応って、何?ビックリして欲しいの?言っとくけど内心ではすげぇ驚いてるから。顔には出にくいけど」 「じゃなくて。そんな意味の分からない力は気持ち悪いとか、おかしいとか…怯えたりしないのかってことだよ」 「なんで?」 「はい?」 「なんで美澄の力にこっちが怯えるわけ?」 「……」 心底不思議そうに尋ねてくる右京に、なんて返せばいいのか分からずに押し黙る。 正直、彼の反応は予想外だ。どう説明すれば伝わるのだろう…と色々悩んだ結果、考えることも億劫になり、助けを求めるように藤花に目配せをした。 「大抵の方は、羽衣の不思議な力を知った時、彼女そのものを"異質"だと捉えるからです。更に未来が視えるということは、もしかしたら他にも何か恐ろしい力を持っているかもしれないという勝手な解釈をされてしまうわけです。中世の魔女狩りみたいなものですね。異質なものを忌み嫌う、的な感じです」 「へぇー」 「なので羽衣は、今まで自分の力を知った人に散々怯えられてきたのです。信用されないことも多々あったので、傷付き、いつしか独りでいる方がマシだと涙を流すように…」 「話を盛るんじゃない。私は傷付いてなんかいないし、怯えるのならば勝手に怯えればいいんだ」 「……でも、それって変な話だよな」 うう、と泣き真似をする藤花を睨んだ時、右京が首を捻りながら呟いた。
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