sacrifice.01 拒絶

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「悪かったな。あんたにイカれてるって言ったこと、今なら本気で酷い言葉だったと思う」 「……」 「ってことで、とりあえず今日のところは帰るよ」 「えっ!もう帰っちゃうんですか?」 「とりあえず美澄に謝りたかっただけだから」 右京は煙草を携帯灰皿にいれながらも腰を上げる。藤花が寂しそうな顔をした。 「夜遅くに押し掛けて悪かった」 「いいんですよ。イケメンだったら何をしても許されますから。あ。これは私の名刺です。この建物の一階のカフェのマスターをしています。ぜひ飲みにいらしてくださいね」 「どうも。また来るよ」 「二人で勝手に話を進めないでくれる?」 藤花の雇い主は私なのに、なぜだか蚊帳の外だ。二人は最後まで私のことを無視して二言三言やり取りを交わすと、梯子に向かって歩いていく。 しかし下りる直前に、右京が私を振り返った。 「あんたのお陰で命拾いした。ありがとう」 「……」 「ここで平気。勝手に出てくから。じゃ、おやすみ」 最後の台詞は藤花に告げて、右京はそこから姿を消す。 いきなり現れて自分のペースでいなくなるなんて、なんて自由奔放な男だ。
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