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午前零時ジャスト。壁に寄り掛かって煙草を吸いながらも右手首に付いている腕時計を確認した。
「よぉ。相変わらず時間きっちりだな、右京」
とっくに時間が過ぎているといういうのにのんびりとそこに現れたのはスーツ姿の男。
「煙草、俺にもくれよ」
「その前に情報」
「……はいはい。分かったよ。ったく。一服する時間くらい寄越せよな」
男はブツブツ文句を言いながらもポケットを弄る。情報が入っているUSBを取り出そうとしているのだろう。
「調べられるところまでは調べたけどあんまり期待すんなよ?"蛇心"なんて、危ない組織に探り入れてんのバレたらこっちが消されちまう」
「バレないようにやんのがあんたの仕事だろ」
「そりゃそうだけどさ…お前はアイツらのヤバさを知らないからそんなこと言えんだよ。っつーかそもそもなんで蛇心のことなんか調べて」
「いいから早く寄越せ」
うるさい声を遮って情報料を男のポケットに捩じ込む。口を閉ざした男は、ほら、とUSBを差し出してきた。
「……あの、お話し中にごめんなさい。ちょっといいかな?」
しかし、それを受け取ろうとした時、突然誰かの声が俺らの間に入ってきた。驚いて声のした方を見ると、そこには見たことのない女が立っている。
「あ?誰だお前」
「あのね、ちょっとあなたと話したくて」
「話?俺と?」
「うん」
あなたと、と言いながらも、女は情報屋に話し掛けている。知り合いか?と目配せをすると、情報屋は訝しげな顔で首を横に振った。
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