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「そんなに驚くことじゃないでしょ」
「……や、だってお前、いつも日中は私服でウロウロしてんじゃん」
「高校は三日に一回くらいしか行ってない。最近は週一だけど」
「不良かよ」
「まぁね。根本的に人が多いところは苦手なんだ」
ここ一ヶ月くらい店に通い続けているというのに、どうやら知らなかったみたいだ。でも考えてみれば、その間に高校に行ったのはせいぜい四回くらいだし、知らなくても不思議じゃない。逆に私が私服でウロウロしていることに気が付いていたことに驚いた。
再び沈黙が訪れて、テーブル席に腰掛けながら麦茶を飲む。いつも通り新聞を読もうとしたら、カタン、と前の席が動いた。
「なんでそこに座るの?」
「聞きたいことがあって」
どうやら今日は積極的に絡んでくる日らしい。とはいえ、右京と話すのは一ヶ月前に屋上で過ごした時以来だ。その急激な接近に心の中で身構えた。
「前に話したこと覚えてるか?」
「覚えてない」
「どうやって未来が視れるのかっていう話」
「……ああ」
言われてみれば、確かに屋上で話した時にそんな質問をされたかもしれない。曖昧に頷けば、彼は少しだけ身を乗り出した。
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