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「なるほど……聞けば聞くほど不思議な力だな」
「だけど遠いところで起こる人の死を視ることだってある。ちなみに君の場合は、寝ている時にはっきりと視えた」
「それもまた興味深いんだけど、例えば人の死を視たとして、どうやってその場所だって認識すんの?いくら未来の中を視れるって言ったって、実際の場所とか、どこの光景とか、細かくは分からないよな?」
「いや、分かる。未来の中には沢山の情報があるから。例えば周りにある店の名前だったり、看板の中に書かれている住所だったり。あとは不思議なことに、未来で視た光景って、自然と脳や体が覚えてたりする。その近辺に行けば、なんだか懐かしいような気がするんだ」
右京は私の話を一言一句漏らすまいと、真面目な顔で耳を傾けていた。また灰が落ちそうだったので、何も言わずに灰皿を差し出せば、思い出したかのように指先で煙草を叩く。
「なんか……想像以上の力だな」
「あって便利なものじゃないけど」
「まぁ、そうだよな。あんたにとったら苦痛でしかないよな」
「……いや、苦痛っていうわけでもないけど」
「だって色んなもんが見えるんだろ。ほら、藤花さんに聞いたけど、女子高生が山奥に監禁されてたってのもそうだろ?それってつまり、その子がどんな目に遭って死んだのか見たんだよな?被害者も可哀想だけどさ、そんな胸糞悪い光景を見なきゃならないなんて、あんたにとったら拷問じゃねぇか」
「……」
右京が淡々と告げたその言葉に、私は、"ああ、またか"と、息が詰まるような気持ちになった。
だって今はそんなことはどうでもいいはずだ。それなのに、さも当然のように私を気遣う言葉を口にするのはなぜなのだろう。
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