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「別に今更なんとも思わないよ」
「ん?」
「その女子高生は最後の最後まで犯人の性欲を満たす玩具のように扱われて、泣きながらお母さんって叫び続けてた。生きているうちに手足を順番に切断されて、最後、首を切られた瞬間に死んだんだ。血が溜まった床の上に、涙を流している女の子の首が転がってた」
「……」
「だけど私はなんとも思わない」
「いや……さすがになんとも思わないなんてことは、」
「慣れたんだよ。どんな光景を見たって胸が痛むことはない。苦痛だなんて思ったこともない。人が死んだって、私はなんとも思わない」
「……」
「だから私のことを知ったような口を聞くのはやめてよ。私が怯えてるとか、苦痛を感じてるとか……そんなことはあんたに関係ないんだからっ、」
話しているうちに感情が昂ぶってしまい、気が付けば勢い良く立ち上がっていた。そんな私を見上げて右京は目を丸くしている。
「美澄、」
「もうここには来ないで」
「……」
「命を救われて感謝してるのなら……お願いだから、もう私に近付かないで」
なんとか心を落ちつかせて、目を逸らしながら告げる。そして鞄を掴むと、右京が何か言う前に素早くその場から立ち去った。
藤花が心配そうな顔をしていたけれど、今は何も話したくなかった。
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