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「羽衣ちゃん!その王子様紹介してよ!」
「いや、そんなこと言われても…」
「性格はどんな感じ!?」
「クズだよ」
「クズ大好き!」
「どう言えば諦めてくれるのかな」
もはや会う気満々の世莉は鼻息を荒くしている。どうしよう、ウザいな。
「一目会わせてくれるだけでいいから!そしたら世莉のエンジェル指数に堕ちない男はいないからさ!即ゲットだぜ!」
「その無駄なポジティブさで自ら王子様を見つけにいきなよ」
「ダメに決まってるじゃない!王子様は迎えに来てくれるのがセオリーでしょう!?」
なんて我儘な女だ。もはや真面目に答えるのも馬鹿らしくなり、とりあえず無視することにした。
するとその直後、がちゃりとドアノブを回す音が聞こえて、私と世莉は虚を衝かれたように固まる。やばい、先公にバレたか。
「え」「あ」
しかしそれは私の予想を遥かに裏切った。そこに現れた人を見た途端に小さな声を漏らせば、向こうにいる人と声が重なる。隣りで世莉が口をあんぐりと開くのが見えた。
「ひぎゃっ!お、おおお王子様!羽衣ちゃん、王子様が世莉のこと迎えに来たよぉ!?」
「……あーうん。そうだね、良かったね」
「あんな人この学校にいたっけ!?え!?いないよね!?」
「とりあえず自己紹介してくれば?私は帰る」
「えっ嘘でしょ!?二人っきりにしないで!」
さっきまでの威勢はどこに行ったのか。私の腕を必死に掴んでいる世莉を横目に、はぁ、と溜息を吐く。そうしている間にも私達のすぐ近くまで歩いてきていた彼は、じっと私を見つめてきた。
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