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電車を数回乗り継ぎ、駅を出て二十分ほど歩く。高校を出てから優に一時間以上は経過していた。その間、右京は何も言わずについてくる。話があると言ったくせに口を開く気配はなかった。
途中で見つけたコンビニに寄るとお茶とお菓子を買う。喉が渇いたのか右京も水を買っていた。
それからまた数分歩けば、突然視界が開けて海が見えた。
「君は目立つからあっちに行ってくれないかな」
「俺が目立ってんじゃなくてあんたが目立ってんだろ」
砂浜に続いている階段の端に腰掛けると、右京も隣りに並んできたので、一段下に移動した。
浜辺では女子高生達が写メを撮りながら騒いでいたり、カップルが手を繋ぎながらのんびり歩いていたり、小学生くらいの子供がお城を作っていたり、海ではサーファーが優雅に波に乗っている。
お茶を飲みながらその光景をぼんやりと眺めていると、「なぁ」と話し掛けられた。
「この前さ、あんたいきなり怒っただろ。それでよくよく考えてみたんだけど、俺、あんたにかなり失礼だったかもなって」
「……はい?」
ようやく話し始めたかと思えば、早速話の主旨が掴めない。眉を顰めながら左斜め後ろを見ると、右京は水を一口飲んだ。
「あの時は夢中になって色々聞いたけど、あんな風に興味本位でしつこく聞かれんのって嫌に決まってるよな。だからずっと悪いことしたなって思ってたんだ」
「……」
「美澄が力のことについてあんま触れて欲しくないっていうならもう触れないから。嫌な思いさせて悪かった」
「……え、」
頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。その言葉の意味をじっくり考えて数秒後、ようやく右京が何を謝っているのか理解出来た。
つまり彼は、この前私が感情的になったのは、力のことを詳しく聞いたからだと勘違いしているのだ。別に今更そんなことで怒りはしないのに。
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