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「君はなんでバスケが好きなの?」
「昔お父さんに教えてもらったから」
「そのボールもお父さんにもらったやつ?」
「うん。俺がすごく小さい時だけど、事故で死んじゃう前にこのボールをプレゼントしてくれたんだ」
「そっか。お父さんの形見みたいなものなんだね」
「うん。命の次に大切なボールだよ」
男の子はボールを撫でながらも照れ臭そうに笑う。口の端にチョコがついていたので指で拭いてあげた。
「ところでさ、お兄ちゃんインターハイに出たんでしょ!?ハンドリング教えてよ!」
「……だってさ、お兄ちゃん」
男の子と一緒に振り向けば、頬杖をつきながらずっと私達のやり取りを眺めていた右京は、ゲッ、と嫌そうな顔をする。
しかし男の子がボールを投げて寄越すと、人差し指の先でボールを回すという技を難なくやってのけた。これには拍子抜けした。
「すげー!他には!?他には!?」
「よし。広いとこ行こーぜ」
立ち上がった右京はドリブルをしながらも、男の子と一緒にすぐそばにある広いスペースに向かう。そのドリブルも慣れたものだ。
どうやら彼は意外にもバスケ経験者らしい。簡単な技から難しい技まで器用にこなしては、男の子は興奮してスゲーを連発している。
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