sacrifice.01 拒絶

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「お兄ちゃん、知ってる?ドリブルこそチビの生きる道なんだよ」 「それスラムダ◯クのもろ受け売りじゃねぇか」 「だけど俺ドリブルが苦手でさぁ…」 「聞けチビ。上手くいくコツはな、跳ね返ってきたボールを待つんじゃなくて自分から迎えにいくんだ。ほら、こうやって」 「スゲー!ボールが手にくっついてるみたい!」 「ほら、やってみな」 更に教えるのも上手いらしく、コツを掴んだ男の子は初めよりも上達している風に見える。パッと顔を明るくさせた男の子の頭を、右京の大きな手がくしゃりと撫でた。 それはほんの数分の間だったけど、二人はあっという間に意気投合したみたいだ。お菓子で足止めしようとしていたのに、まさかこんな形で右京に助けられるとは。 それからしばらく二人が戯れていると、向こうの方からひとりの女性が歩いてくるのが見えて、もうそろそろか、と腰を上げた。 「あっ!お母さん!」 女性の存在に気が付いた男の子が笑顔を見せる。彼の母親は不思議そうに右京を見た。 「右京、行こう」 本当は置いていきたいところだけど、男の子の足止めに付き合わせてしまった手前、不本意であるが声を掛けざるを得なかった。 「じゃあね、少年」 「うん!お姉ちゃん、お菓子ありがとう!」 「え?湊、お菓子もらったの?」 「お菓子もらったし、こっちのお兄ちゃんにはバスケ教えてもらったんだ!」 「ええ…。あの、ごめんなさい。この子に付き合わせちゃったみたいで」 どうやら少年は湊くんという名前らしい。申し訳なさそうに謝る母親に、いえ、と首を横に振った。
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