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「お兄ちゃん、知ってる?ドリブルこそチビの生きる道なんだよ」
「それスラムダ◯クのもろ受け売りじゃねぇか」
「だけど俺ドリブルが苦手でさぁ…」
「聞けチビ。上手くいくコツはな、跳ね返ってきたボールを待つんじゃなくて自分から迎えにいくんだ。ほら、こうやって」
「スゲー!ボールが手にくっついてるみたい!」
「ほら、やってみな」
更に教えるのも上手いらしく、コツを掴んだ男の子は初めよりも上達している風に見える。パッと顔を明るくさせた男の子の頭を、右京の大きな手がくしゃりと撫でた。
それはほんの数分の間だったけど、二人はあっという間に意気投合したみたいだ。お菓子で足止めしようとしていたのに、まさかこんな形で右京に助けられるとは。
それからしばらく二人が戯れていると、向こうの方からひとりの女性が歩いてくるのが見えて、もうそろそろか、と腰を上げた。
「あっ!お母さん!」
女性の存在に気が付いた男の子が笑顔を見せる。彼の母親は不思議そうに右京を見た。
「右京、行こう」
本当は置いていきたいところだけど、男の子の足止めに付き合わせてしまった手前、不本意であるが声を掛けざるを得なかった。
「じゃあね、少年」
「うん!お姉ちゃん、お菓子ありがとう!」
「え?湊、お菓子もらったの?」
「お菓子もらったし、こっちのお兄ちゃんにはバスケ教えてもらったんだ!」
「ええ…。あの、ごめんなさい。この子に付き合わせちゃったみたいで」
どうやら少年は湊くんという名前らしい。申し訳なさそうに謝る母親に、いえ、と首を横に振った。
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