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頭の中に、鮮明に蘇る。
事故の瞬間、強い衝撃だった。一瞬で頭の中が空っぽになって、視界が見えなくなって、酷い熱さが身を包んだ。痛みなのかなんなのかはよく分からない。苦しくて、叫びたいけど、声になっているのかも分からない。
やけに聞こえる音が遠くて、だけどそんな中、お母さんの声だけが聞こえた。その声は、聞いたことのない断末魔のような叫びだった。
痛かった、とても。うっすらと瞼を開けた時に見えたお母さんの泣き顔は、お父さんが死んだ時にも見たことがなかった。
──…ああ、やだな。お母さんの泣いた顔を見ると、僕も泣きたくなる。抱きしめてあげたいな。いつも僕が悲しいと、お母さんは抱きしめてくれるから。
ああ、でも、やっぱり痛いな。すごく痛くて、息が出来なくて、苦しい。抱きしめてあげたいのに、体がちっとも動かないんだ。
お母さん…痛いよ。苦しくて、熱くて、なにも見えない。怖くてたまらない。
助けて、お母さん──…
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