sacrifice.00

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まったくもって訳が分からなかった。 その場に取り残された俺は、情報屋を追い払ってしまった女を眺める。もしかして俺を殺そうとしているのかもしれない…と脳裏によぎったけれど、そいつは持っている拳銃をショルダーバッグの中にしまった。 「じゃ」 「……は?」 かと思いきや、なんの説明もなく立ち去ろうとしたので、慌てて女の腕を掴んだ。 「いやおかしいだろ。なんで何事もなかったかのように帰ろうとしてんだよ」 「……」 「っつーかそのピストル何?本物?」 カバンを指差して尋ねるけれど、女は何も答えない。そこで初めてその顔をまじまじと眺めることが出来た。 正直、パッと見た時からかなり綺麗な顔立ちだと思ったが、真正面から見た方がより一層印象的だ。 全体的に色素が薄く、血が通っているのか疑うほどに肌が真っ白だ。鼻筋が通り、目は大きく、形の整った赤い唇はふっくらとして弾力がある。茶色い瞳がじっと俺を見据えて、瞬きをする度に長い睫毛が揺れた。 さぞモテそうな雰囲気だ。それなのに彼女はさっきまで平然とピストルを持っていた。ミステリアスな女だ。
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