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「……なぁ。聞いてもいい?」
「断る」
「ここに来たのって湊を助けるため…だよな?」
「……」
「それで思ったんだけど、湊があそこで母親の帰りずっと待ってるって美澄言ってただろ。未来を視るのってそういうのも分かんの?」
「そんなわけないでしょ。あれはただ何回かここに来てみたら、湊が母親を待ってることに気が付いたから」
「何回もここに来たのか?」
「学校の帰り道だ」
「全然遠回りだけど。それどころか結構な遠出だけど」
「……何が言いたい」
「それに湊を足止めするためにお菓子買ったり、ボールのケース用意してたよな」
「だから、それが何か」
「美澄って基本的に冷たそうに見えるけど、そういうとこ用意周到っていうか、優しいんだな」
歩きながらもなんとなしに言われたその言葉に、ピタリと足を止める。数歩進んでからそのことに気が付いた右京は、不思議そうに振り返った。
「美澄?」
「……やっぱり君のことは苦手だ」
「は?」
「苦手だ」
二度繰り返して、さっさと歩き出す。それから数秒遅れて追いかけてきた右京は私の横に並んだ。
「もしかしてさ、照れてんの?」
「は?私が?照れる?何を言ってるんだ君は。バカじゃないのか。私のどこが照れてるんだ。君の目は節穴なのか」
「へー。照れると口数が多くなるんだな」
右京は唇の端を持ち上げておかしそうに話す。
なんだか無性に腹が立ち、それから目的地に着くまで話し掛けられても無視し続けた。
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