sacrifice.01 二度目の未来

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「……え?羽衣がそんなことを?まぁ普段から口が悪いので特に驚きませんが、初対面の人にそんな失礼なことを言うとは思えないのですが…」 「なんかさ、相手と取引をしていたんだって。それを私が追い払ったから怒ってた」 「まぁ…何も知らなかったら怒るでしょうね」 「だから説明したんだ。君は殺される予定だったんだよって。そしたらあの男、未来が視えるなんて頭がイカれてるんじゃないかって」 「なるほど。その言われようは腹が立ちますが」 「だから次は勝手に死ねばいい」 「羽衣みたいな天使の口からそんな台詞が出てくるなんて、相手の方もさぞ驚かれたでしょうね……ブハッ、やべぇ、想像しただけでバリクソウケんだけど」 「……」 「ごめんなさい、少々取り乱しました。紅茶をどうぞ」 一瞬で真顔に戻った藤花(とうか)は、私の前に湯気が立っているカップを置く。ちなみに彼女はざっくり言うと私の付き人で、普段はこの喫茶店のマスターとして働いている。 見た目も話し方もかなり温厚且つ上品であるけれど、それは建前であり、裏ではクソとか言っちゃうようなギャップの激しい性悪女。   「でも仕方ないと思いますよ。いきなり未来が視えるなんて言われても、ねぇ」 「いくら馬鹿げてると言えども、イカれてるは言い過ぎだ」 「確かに…。そんな失礼な方ですと、きっとお顔も崩れていらっしゃるんでしょうね。基本的に性格が醜い豚野郎はお顔も不細工ですもの」 「いや。顔は食材に例えると熟成バルサミコ酢、車に例えるとベントレーみたいな男だった」 「なんですって?どちらも高級な代物じゃないですか。羽衣がそこまで言うなんて、きっとさぞ眉目秀麗な王子様なんでしょうね」 「でももう二度と会うのはごめんだ」
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