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「……え?羽衣がそんなことを?まぁ普段から口が悪いので特に驚きませんが、初対面の人にそんな失礼なことを言うとは思えないのですが…」
「なんかさ、相手と取引をしていたんだって。それを私が追い払ったから怒ってた」
「まぁ…何も知らなかったら怒るでしょうね」
「だから説明したんだ。君は殺される予定だったんだよって。そしたらあの男、未来が視えるなんて頭がイカれてるんじゃないかって」
「なるほど。その言われようは腹が立ちますが」
「だから次は勝手に死ねばいい」
「羽衣みたいな天使の口からそんな台詞が出てくるなんて、相手の方もさぞ驚かれたでしょうね……ブハッ、やべぇ、想像しただけでバリクソウケんだけど」
「……」
「ごめんなさい、少々取り乱しました。紅茶をどうぞ」
一瞬で真顔に戻った藤花は、私の前に湯気が立っているカップを置く。ちなみに彼女はざっくり言うと私の付き人で、普段はこの喫茶店のマスターとして働いている。
見た目も話し方もかなり温厚且つ上品であるけれど、それは建前であり、裏ではクソとか言っちゃうようなギャップの激しい性悪女。
「でも仕方ないと思いますよ。いきなり未来が視えるなんて言われても、ねぇ」
「いくら馬鹿げてると言えども、イカれてるは言い過ぎだ」
「確かに…。そんな失礼な方ですと、きっとお顔も崩れていらっしゃるんでしょうね。基本的に性格が醜い豚野郎はお顔も不細工ですもの」
「いや。顔は食材に例えると熟成バルサミコ酢、車に例えるとベントレーみたいな男だった」
「なんですって?どちらも高級な代物じゃないですか。羽衣がそこまで言うなんて、きっとさぞ眉目秀麗な王子様なんでしょうね」
「でももう二度と会うのはごめんだ」
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