心、弾む

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「ねぇ、あんたのところに六花いない?」 その日もいつも通り、雪さんの部屋でゴロゴロしていた時だ。 キッチンの小窓の方からママの声が聞こえてきて、ハッと息を飲んだ。 「起きたら六花がいないの。前にあんたのところに出入りしてるって近所の人に聞いたんだけど、本当なの?」 こっそり見てみれば、小窓のところにママと雪さんが立っている。慌てて布団の中に潜り込むと、「なんとか言ったらどうなのよ!」とママが怒鳴った。 「六花に手を出してないでしょうね?……ねぇ!ちょっと!」 ガチャッとドアノブを回す音がして、雪さんが中に入ってくるのが分かった。あのママに少しも物怖じしないなんて、さすが雪さん。 だけどしつこいママのことだ。きっと無理やりにでも部屋に入ってくるに違いない。こっそり布団から抜け出した私は、バレないようにそろそろと窓に近付いていった。 そこから下を覗き込めば、その高さにゴクリと唾を飲む。さすがに飛び降りることは不可能だ。とはいえ、他に隠れられる場所なんてどこにもなかった。 その直後、「中見せなさいよ!」と案の定ママが部屋に押し入ってくる足音が聞こえてきた。一か八かだ。 「……ちょっと、いないじゃない。六花!隠れてるんでしょ!出て来なさい!」 バサっと布団をめくる音や、棚を開ける音や、ドタドタと動き回る音がする。 窓の外にいる私は、桟をガシッと掴んで、でこぼこの窪みに足を引っ掛けながらバレませんようにと祈った。
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