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「聞いてんの」
「……あ、うん。そうだね、今度からはぶら下がらないようにする」
ハッと我に返って頷けば、雪さんは起き上がって両手を後ろにつくようにして座る。どくタイミングを逃した私は雪さんの膝の上に座ったまま、いつものモサモサを取り戻した雪さんを見返した。
「ママ、なんで雪さんにあんなに怒るのかな」
「端から見たらロリコンに見えるから」
「ロリコンってなあに?」
「大人が歳の離れた子供に手を出すこと」
「あー…なるほど。そういえばママが、雪さんと六花は二十歳くらい離れてるって言ってたよ」
「そこまでは離れてないだろうけど」
「雪さん、何歳?私は8歳」
「その倍」
「32歳?」
「なんで四倍だよ。二倍してみ」
「…………えっ!うそ!!!」
思わず大きな声を出して雪さんを凝視する。雪さんがちゃんと受け答えしてくれることも驚きだけど、まさかモサモサのおじさんだと思っていた雪さんがそんなに若いだなんて。
「それにしても、やっぱり嫌だな。雪さんと離れ離れにしようとするママ、嫌い」
さっきのママを思い出して、思わず顰めっ面になる。
するとふいに頭をぽんっと撫でられて、驚いて顔をあげれば、雪さんが私の髪に触れていた。
「大切だからだよ」
「え?」
「大切だから、あんなに心配してるんだろ」
それがママのことだとすぐに分かって、こくりと頷く。酷いことを言われたのは雪さんなのに、やっぱり雪さんは優しかった。
「雪さん、また来てもいい?」
「駄目」
「え!」
「って言っても来るんだろ」
ガーンとショックを受けたものの、雪さんの言葉にすぐに笑顔になる。
いつも能面で何を考えているのか分からないし、全然喋らないし、沢山謎めいているけれど、私を邪険にすることはない。そんな雪さんから離れることなんてちっとも考えられなかった。
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