心、弾む

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隣りの部屋のお兄さんは、いつも長い前髪のせいで目が隠れていて、髪の毛もモサモサだった。そのせいで同じアパートに住んでいる人や近くに住む人達はみんな、そんなお兄さんを雪男と呼んだ。  だけど中には、お兄さんが実は美少年だという噂もちらほら。そういえばママも、たまたまお兄さんにばったり出くわした時に声を掛けていたっけ。「あなた、男前ね。なんならタダで抱かせてあげてもいいわよ」と。 ママは夜の仕事をしていて、夜の蝶の中でもナンバーワンなのだと、うちんちに来る男の人が言っていた。どうやらママは凄く美人らしいんだけど、それでもお兄さんはナンパしてきたママに対して一度も目を合わせなかった。 そんなお兄さんに、ママは「根暗野郎」と罵声を浴びせた。だけどお兄さんは無視をして鍵を開けると部屋の中に消えた。 「気を付けなさいよ。あの男、もしかしたら子供に手を出す趣味があるのかもしれないから」 肩を怒らせながらママは負け惜しみを言う。 多分お兄さんはそんなことしないと思ったけど、ママに反論したら怒られるから、「はいママ」と頷いた。
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