第2章 謎の加減は中級編

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 一体どうしてそんなことになるというのか。聞けば巨匠は最近身体を悪くしがちで、ここから少し離れた自宅で療養中なんだそう。 「それはここの仕事をしながらじゃできないんですか?」  思うことは皆同じ。稲塚さんにいてほしいんだ。 「もちろんできるだけ顔は出します。だけど今のように毎日来ることは難しい」  嫌だ! そんなの嫌!  魂が叫んでいるような気さえした。  だけど、え? なんで?  私はもう稲塚さんのことを恋愛対象として見ていないはずなのに。  どうしてこんなに気持ちが急くの。 「あ、沢口さん」  それはそんな突然の発表があった日の退勤後のことだった。 「少し、時間あるかな」  どきん。久々に心臓が跳ねた。
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