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応仁の乱
高山俊樹は「ブラック・オーダー」との対決の後、自身の書きかけだった大河ドラマ『応仁の乱』に再び向き合っていた。だが、彼の心の奥底には、ある人物への復讐心が燃え上がっていた。それは、かつて彼が信頼していたライター、菅藤昌也だった。菅藤は北村一輝に似てる。
数年前、高山は『応仁の乱』の企画を立ち上げ、丹念に歴史資料を調べ上げて、壮大な物語を執筆していた。しかし、完成間近になって、その原稿が何者かに盗まれてしまった。後に分かったのは、盗んだのは菅藤であり、彼は高山の原稿を自らのものとして出版社に売り込んでいたのだ。『応仁の乱』はその後、大ヒットし、菅藤は一躍有名ライターとなったが、高山は失意のどん底に突き落とされた。
「奴が盗んだ…あの物語を…俺の人生そのものを!」高山の拳は怒りに震えていた。だが、復讐を果たすためには、冷静に計画を練る必要があった。
彼は菅藤が執筆している次の作品に狙いを定めた。菅藤の新作は、奇妙にもまた『応仁の乱』をテーマにしていた。だが、菅藤の歴史知識は表面的で、深みを欠いている。高山はそこに目をつけ、彼を徹底的に追い詰める方法を考えた。
高山はまず、自分の中にある『応仁の乱』の全てを新しい形で具現化することを決意した。彼は夜を徹して執筆を続け、かつての原稿を超えるほどの緻密な描写とドラマ性を盛り込んだ。物語の中心には、歴史上の人物たちの内なる葛藤と、混沌とした時代に翻弄される人間模様が織り込まれていた。
「この物語が完成すれば、奴の偽りは暴かれる」高山は確信していた。
同時に彼は、菅藤の弱点を突く計画を進めた。菅藤は虚栄心が強く、自分の成功を常に周囲に誇示していた。高山は業界の噂を操作し、菅藤が過去に盗作の疑惑があったことを再び蒸し返す記事を書かせた。これにより、菅藤は徐々に業界内での信頼を失っていった。
一方、菅藤は次第に焦りと不安に苛まれていた。新作の進行は遅れ、執筆に対する自信を失いかけていた。周囲のプレッシャーと、盗作疑惑に再び火がつき始めたことで、彼の精神は限界に達しつつあった。
「くそっ、俺は成功者だ!あいつの原稿を使って何が悪いんだ…」菅藤は自暴自棄になり、酒に溺れるようになっていった。
しかし、その裏で高山は静かに反撃の準備を進めていた。彼は菅藤の次の作品の発売日に合わせて、自らの真作『応仁の乱』を発表する手はずを整えていたのだ。
ついにその日が訪れた。高山の真作『応仁の乱』が世に出た瞬間、それは瞬く間に話題を呼び、歴史愛好家や批評家たちの間で絶賛された。菅藤の盗作版はその影に完全に埋もれ、誰も彼の名前を口にすることはなくなった。
「俺の勝ちだ…」高山はようやく手に入れた勝利を噛み締めながら、静かに微笑んだ。
しかし、物語はそれだけでは終わらなかった。菅藤は自分の全てを失ったことで、ついに高山に直接対決を挑んできた。
「お前が俺から全てを奪った!許さない…!」
菅藤はナイフを手に、狂気の表情で高山に詰め寄った。
だが、高山は冷静だった。彼はボクサーとしての経験を活かし、瞬時に菅藤を制圧した。「お前が始めたことだ。俺はただ、自分のものを取り戻しただけだ」
菅藤はその後、逮捕され、彼の名前は業界から完全に消え去った。高山は自らの力で復讐を果たし、新たな大河ドラマの企画に取り掛かることを決意する。
だが、彼の手元には、あの「運命の一冊」が再び残されていた。高山はその本を見つめ、呟いた。
「運命を操るのは俺だ」
物語は新たな展開を迎え、運命の歯車は再び回り始めた。
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