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運命への反逆
「いよいよだな…」高山俊樹は拳を握りしめ、ビルの正面に停めてある黒光りするジェットタイプのバイクに目を向けた。そのバイクは、かつて傭兵時代の中町徹が入手し、軍用にカスタムされた特殊モデルだった。通常のバイクとは一線を画す、まるで戦闘用に設計されたマシンだ。
「これに乗るのか?」高山が驚いたように言うと、中町は無言で頷いた。
「やれるか、高山?」中町の問いに、高山は冷静にうなずいた。「こいつが俺に運命を変える手を与えてくれるなら、俺は乗るしかない」
バイクに跨がると、エンジンが低い轟音を響かせた。ジェットエンジンが始動し、地面から浮かび上がる感覚が高山の体を包む。ハンドルを握る手に力が入り、彼の脳裏にはこれから始まる激しい戦闘のイメージが一瞬よぎったが、彼はその不安を振り払い、全身に集中を注ぎ込んだ。
「お前が先陣を切れ、高山。俺たちは後方で援護する」大下裕二が指示を飛ばし、銃を構えた。彼の眼はすでに建物の周囲に潜む敵の気配を捉えている。
高山は無言で頷き、アクセルをひねった。バイクは突然の加速で空中に飛び上がり、音速に近いスピードで廃墟のビルに向かって突き進んだ。ビルの外壁には、数多くの見張りが待ち構えていたが、高山の操るジェットバイクの速度には全く反応できない。
「行くぞ…!」高山は叫び、ビルの壁にあるガラス窓を目指してバイクを垂直に突進させた。窓ガラスが破片となって飛び散ると同時に、彼はバイクを壁に沿って滑らせ、そのままビル内へ侵入。
敵が驚愕の表情を浮かべる中、高山はバイクの両側に備えられた小型ミサイルを発射。爆音と共に廊下に待ち構えていた敵たちが次々と吹き飛ばされていく。煙が充満する中、高山は一瞬もスピードを緩めることなく、ビルの最上階へと突き進んだ。
「待て!」建物の中央階にいる敵のリーダーが叫んだが、高山は聞く耳を持たず、バイクのエネルギーを最大出力に切り替えた。バイクが一気に加速し、わずか数秒でリーダーの立っているフロアへ到達。
「お前が黒幕か…」高山はバイクから降り、目の前の男を睨みつけた。黒幕は不気味な笑みを浮かべ、両手を広げた。
「運命は変えられない、高山俊樹。お前が何をしようと、全ては決まっている」
「決まっているのは、お前の終わりだ」
高山は拳を握りしめ、バイクから勢いよく飛び降りた。彼の拳が鋼のようにリーダーの顔面に炸裂した瞬間、ビル全体が震えるような衝撃が走った。
ビルの屋上で、高山は深く息をついた。周囲には敵はもういない。空を見上げると、彼の心には奇妙な静けさが広がっていた。運命の一冊を巡る戦いは終わりを告げたが、高山たちの物語はまだ続いている。
「運命なんて、自分で作り出すもんだ」
バイクにまたがりながら、高山は静かに呟いた。そして、彼は再びエンジンをかけ、夜の街へと飛び去っていった。
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