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黒幕
高山俊樹は、ジェットバイクを再び加速させながら、中藤編集長の言葉が脳裏をよぎっていた。「運命の一冊は一冊ではない」――それが意味するところは何だったのか。敵の背後に、さらなる大きな存在が潜んでいるのではないかという不安が、次第に確信へと変わっていく。
目的地はかつて自分たちが戦った廃墟ビル。そこに残されている手がかりが、すべてを解き明かす鍵となるはずだった。建物の廊下を駆け抜けると、以前の戦いの痕跡がまだ色濃く残る中、異様な静けさが漂っている。
高山は奥にある会議室の扉を開けると、そこで待っていたのは――中藤編集長だった。
「…お前が、黒幕だったのか?」
高山の言葉に、中藤は静かに微笑んだ。「やっと気づいたか、高山。だが、それはお前が思っているほど単純な話ではない」
編集長は椅子にゆっくりと腰を下ろし、懐から古びたノートを取り出した。そのノートは、まさに「運命の一冊」に関連する書物のように見えた。
「これはな、お前の書いた物語だ。だが、実はお前が書いていると思っていたその瞬間にも、物語を動かしていたのは俺だったんだ。お前の人生のあらゆる決断、そのすべてが俺によって導かれていた」
高山は目を見開き、後ずさった。「どういうことだ…?」
中藤はさらに言葉を続ける。「『運命の一冊』とは単なる本ではない。これは未来を決めるための力だ。そして、その力を操作するための鍵が、俺にあった。お前が書いている物語は、常に俺が裏で修正してきた。だからこそ、お前は運命に逆らえず、俺の筋書き通りに動いてきたんだ」
高山は言葉を失った。自分が信じてきた人生、戦い、仲間――それらがすべて中藤の手のひらの上だったという事実に、怒りが込み上げてくる。
「お前が黒幕として仕組んでいたすべての計画、それは俺たちを利用するためだったのか?」
中藤は冷笑を浮かべた。「そうだ。お前たちがどれほどの力を持っていたとしても、俺には及ばない。だが、高山、ここで終わりじゃない。これからが本当の『運命の戦い』だ」
高山は拳を握りしめ、再び立ち上がった。「運命なんて、俺の力でぶっ壊してやる…!」
彼は中藤に向かって突進し、その拳が次の瞬間、中藤の胸元に炸裂した。中藤は後ろに倒れながらも、不気味な笑みを崩さない。「さあ、続けるがいい。お前の物語は、まだ終わらない…」
高山の心は激しく揺れながらも、これまで以上に強い決意で満たされた。彼は「運命の一冊」の真の力を手にし、中藤の影響を打破するため、最後の戦いに挑む覚悟を固めたのだった。
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